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STORY : 002 
真に解決したいのは 貧困
フードバンク岩手 阿部知幸さん インタビュー【前編】
特定非営利活動法人フードバンク岩手  with  EARTH BANK GALLERY

お米や缶詰、調味料やお菓子などの食品を集め、支援機関を通じて生活に困っている家庭に届ける活動をしているNPO法人『フードバンク岩手』。2014年の発足以来、岩手県を中心に支援を続けています。EARTH BANK GALLERYも提携させていただき、撮影案件で集まった食品や日用品を提供しています。今回の記事では代表を務める阿部知幸さんにこの活動を始めた背景や抱えている課題、これからのビジョンについてお聞きしました。

▲フードバンク岩手 ロゴマーク

「もったいない」を「ありがとう」に

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“フードロス”や“フードバンク”という言葉。最近はメディアでも取り上げられ全国でも支援活動が広がっています。多くの人がこの言葉を耳にしている一方で、実際に「食品を寄付したことがある」という方はどれくらいいるでしょうか。

今回、お話をうかがったフードバンク岩手の代表を務める阿部知幸さんは、寄付やボランティア経験のある人が世の中の1割以上になる世界を目指したいと話してくれました。

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阿部知幸さん(以下敬称略):

「発足当時にくらべて“フードバンク”という言葉や取り組みが認知されてきたこともあり、活動は少し楽になりました。年々、取扱量も増えてきまして、昨年度は延べ1137件、約5150人に提供することができました。事業に収益性がないのでまだまだ大変なことは多いのですが、多くの人が関心を寄せてくれています」

 

フードバンク岩手では、寄付として集められた食品を回収・検品し、支援先の家族構成や年齢層などを考慮したうえで箱詰め。それを行政や社会福祉協議会などの支援機関を通じて各家庭に届けています。

この“支援機関を通じて配布する”ことは阿部さんがもっとも大切にしている過程です。

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阿部「真に解決したいのは、貧困をなくすことです。フードバンクを使って、困っている家庭やお腹を空かせている子どもがいる家庭を見つけ、早い段階で支援機関につながってほしいと思っています。ですので自分たちで食材を届けるのではなく行政や支援機関を通じて、なるべく多くの接点を持ってもらうことを大切にしています」

配布する食材も1回に一か月分を届けるのではなく二週間分を2回届けるなど、提供する方法にも細かく気を配ります。

困っている人にそっと手を差し伸べられるように、フードバンクの活動を一つの手段と捉えて支援を広げる。問題の根本を見つめてきた阿部さんだからこその仕組みづくりです。
7年前にこの活動をNPOとして立ち上げた背景には、阿部さんのどんな思いがあったのでしょうか。

※ イメージ画像です。

「がんばっていないから」ではない - “貧困”は誰にでも起こりうること-

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当時の阿部さんはメーカーの営業や証券会社勤務など「普通のサラリーマンだった」と言います。ご両親が岩手県出身で阿部さんご自身は仙台生まれ、都会にいきたい!と東京の大学へ進学しますが、就職して最初の配属先はご縁があってか、たまたま岩手の盛岡でした。

阿部「恥ずかしい話ですが、僕自身もサラリーマンとして働いていたときは貧困や生活困窮についてよく理解していなくて「がんばっていないから貧困になるのでは」くらいにしか考えていなかったんです。ところが震災が起きた。ある日突然、自分ではどうしようもないことで生活のすべてが奪われるのを目の当たりにしたんです。沿岸部の瓦礫撤去のボランティアをしながら、こんな状況の中、会社で働くことより何か自分はやるべきことがあるんじゃないかと考えはじめた時でした」

取扱量に比例して、業務の幅が拡がり活動の運営費など出費も増えるのが実情です。

支える側であるNPOの活動そのものにも課題がでてきます。一つひとつの課題に対して、阿部さんはフードバンクを通じてどのように向き合ってきたのでしょうか。

▲フードバンク岩手 事務局長 阿部 知幸さん。

阿部「必要なものが届かないという現象を防ぐためにも、なるべく一か所に集まる仕組みと、提供されたものを無駄にしないよう、提供先もある程度確保するようにしています。例えば個人では消費しづらい業務用の調味料などは、児童養護施設や社会福祉法人が運営している寮などは歓迎される。届けられた食材を適所に差配するネットワークづくりも大切です」

全国に“フードバンク”として機能しているのは現在、約150団体。阿部さんが活動を始めた14年頃はまだ20団体ほどでした。食品の支援団体が増えたことで、活動の認知度があがり、それに比例して支援される食品の提供量も増えます。それ自体は大きなメリットですが、提供先が増えると必要なものが必要な人へ届かないという別の問題も出てきます。例えば、こちらには子供向けの食品、お隣のフードバンクにはお年寄りの食品があるのに、届けられるSOSはそれぞれが逆、という事も。

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設立から7年、新たに抱える課題

目の前の被災者支援からはじまった、フードバンク岩手の活動。一時的な支援だけでは解決できない、もっと根本的な問題に向き合うための決断でした。

阿部「被災された方から、命は助かったけど生活が苦しい。こんなことならあの時死んでおけばよかった、という話も聞きました。実際の支援制度では、親を亡くした子どものほうが手厚い支援が受けられる状況でした。親は生きているけど仕事がなく生活が苦しい、そんな子どもの支援も必要だと感じました。」

盛岡には800世帯ほどが避難し、その支援センターができるので手伝ってほしいと声をかけられたことをきっかけに、阿部さんの活動が始まります。

食品の支援を中心にしていると、「盛岡じゃないけど支援してほしい」、「被災者じゃないけど困っている」、という声が次々と阿部さんの元へ届くように。それなら岩手全体に手を差し伸べられる活動にしようと『フードバンク岩手』を設立されました。

次回の記事では、新たな課題を踏まえフードバンクの在り方や今後のビジョンについてもお話を伺います!

writhing : KAZUMORI YUKO / 計盛 祐子

▲岩手県 大船渡市 / (c)MASAAKI TANAKA/SEBUN PHOTO/amanaimages

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