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この作品シリーズはコロナ前の2019年から撮影し始めたもの。日本橋のギャラリー『Roonee247 Fine Arts』で個展を開催し、昨年11月の『日芸祭』ではコロナ禍になってから再びセレクトした作品を追加して展示されました。その際提供したフレームも有効活用してくれたそうです。

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フォトフレームの先に広がる、様々な視点。

▲21年11月、銀座「NAKANO GINZA GALLERY」にてグループ展「白白」を開催。小野澤さんは作品「タイムカプセル」を6点展示した。

小野澤「フレームの種類をいくつか試してみて、白のフレームを選びました。引き延ばした作品が数点あったので、その兼ね合いを考えると提供いただいた白のフレームはよくなじんでとても使いやすかったです」

 

21年度の日芸祭はコロナ禍の影響で、残念ながら一般公開は見送られたものの、在校生はその分一枚一枚の作品を丁寧に見てまわれたそうです。

 

日芸祭の後、フレームは学校側が管理し、学生が申請すれば自由に使う事ができるように運用されています。学園祭以外にも個展など様々な場面で活用されており、

小野澤さんも、個人で開催した写真展示でフレームを活用してくれたそうです。

小野澤「銀座でグループ展を開催した時は、“原点回帰”をテーマに昔住んでいた団地の風景を撮影しました。新しい撮影方法にも挑戦したくて二眼レフを使って撮影しています。子どもの頃は団地の中が世界のすべてだったけれど、今改めて訪れてみると記憶とは違って小さく感じたり、こんなものがあったっけ?と新しい発見があったり。21歳になった自分が感じた違いを写真におさめた作品です。団地の風景を並べた時にシルバーの縁がよく合っていたので、このフレームを活用しました」

電車のホームに佇むスーツ姿の二人。顔には動物のお面をつけています。そこに表情はなく、喜怒哀楽の感情も読み取れません。『#FACE』と名付けられたこの作品はマスクをつけた人間がごく日常の風景に溶け込み、「現実と非現実」の曖昧さを映し出しているように感じられます。

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リアルな風景に“非現実”が混ざり合う

写真作品『#FACE』

▲ 日本橋のギャラリー『Roonee247 Fine Arts』で個展を開催

小野澤さん(以下敬称略)「日常の中で、ツイッターで友達が喧嘩していたり、Instagramで浮気が発覚した人がいたり、身近にそういうことを聞く度に不思議だなと感じていました。“どっちが現実なのか、現実に見ていないのに信じていいのか”そんな風に考えたことがこの作品を作るきっかけになりました」

被写体にスーツを着せることで、都会の風景に溶け込ませる。お面には年齢や性別もなく、不気味さもなければ愛嬌もない、まったくフラットな表情のものを選ぶことで、SNS上のアイコンのような意味合いを持たせる。『#FACE』の作品には見る側にどちらが本質なのかを問いかけるための狙いがあちこちに詰まっています。

昨年にEARTH BANK GALLERYへ物資として提供されたものの中に写真フレームがありました。小さな傷などがあるものの使用には問題がないため、どこか有効活用してくれる場所はないかスタッフが探し、写真学科や写真サークルのある大学や専門学校へ寄贈させていただきました。

廃棄されるはずだったフレームは、どんな作品に出合ったのでしょうか。今回は、このフレームを活用し学園祭で写真展示をした日本大学芸術学部写真学科の小野澤志穂さんに、展示の様子や制作した作品についてお話をうかがいました。

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STORY : 005
クリエイターの新たな感性を縁取る
“ フレームバトン ”
廃棄されるフレームを有効活用
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日本大学芸術学部写真学科  with  YellowKorner
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撮影ってたのしい!という気持ちが原点に。

今年は大学4年生の年を迎える小野澤さん。授業や就職活動などこれからは多忙な毎日が待っていますが、卒業までの間に新たな展示をしてみたいと計画しているそう。お話をうかがっていると、“写真が好き”という気持ちがひしひしと伝わってきます。

 

小野澤「作品のコンセプトを考える時も、シャッターを切る時も、どの瞬間も大好きな過程ですが、一番好きなのは撮った作品を人に見てもらう時です。とくに被写体になってくれた人に作品をみせて、喜んでもらえたり、これ本当に私?と驚いてくれたりすると手ごたえを感じられて嬉しいです。」

 

人物の撮影に魅力を感じて、作品制作を続ける小野澤さん。最後に写真をはじめた原点について伺うと、小学生の頃のエピソードを話してくれました。

 

小野澤「近所の公民館で開催された一眼レフで撮影してみようという講座に参加しました。その時に感じたシャッターを切る楽しさや、作品を褒めてもらえた嬉しさが忘れられなくて。進路を決める時にも迷いなく写真を選びました。」

▲ 日本大学芸術学部写真学科3年生 小野澤志穂さん

小さな頃に感じた“たのしい!”という気持ちを変わらない温度でずっと持ち続けていること。小野澤さんの作品からは、好きなものへ向かうまっすぐな気持ちが表れているように感じます。

 

廃棄されるはずだったフレームは、こうして小野澤さんの瑞々しい感性で撮影された作品に出合うことができました。この他にも提供させてもらった先の学校では様々な展示に活用されているそうです。

 

集められた資材を、次の使い手へと、バトンを手渡し、受け取った先で新しいクリエイティブが生まれる。クリエイターが踏み出す一歩に、このフレームが寄り添えたことはEARTH BANK GALLERYの活動にとっても新たな手ごたえを感じることができた事例になりました。

writhing : KAZUMORI YUKO / 計盛 祐子

All photographs are the copyright of individual photographers/ amana& EARTHBANKGALLERY   ©︎ 2021 amana inc.