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フードバンク岩手  with  EARTH BANK GALLERY
フードバンク岩手 阿部知幸さん インタビュー【後編】
​「誰かのために何かしたい」
STORY : 002

“「もったいない」を「ありがとう」に ”  をテーマに食品を集め、支援機関を通じて生活に困っている家庭に食品を届ける活動をしているNPO法人『フードバンク岩手』。
 EARTH BANK GALLERYも提携させていただき、撮影案件で集まった食品や日用品を提供しています。記事の後半では代表を務める阿部知幸さんにフードバンクを通じて実現したいビジョンについてお聞きしました。

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「何かしたい」という人が 気軽に参加できる フードポスト

NPO設立から7年。フードバンクという言葉の認知があがり、取扱量も順調に増えてくる一方で、新たな問題も現れます。活動規模が大きくなることで運営費などの出費が大きくなることや、食品を無駄にしないために効率よく回収することも課題になります。

例えば、効率だけを考えると食品メーカーさんなどに協力してもらい一度にまとまった量を集めることも一つの方法です。それでもフードバンク岩手は“フードポスト”と呼ばれる食品回収ボックスを県内のあらゆる場所に設置することも大切にしています。それには2つの役割があるそうです。

writhing : KAZUMORI YUKO / 計盛 祐子

<<< ​特定非営利活動法人フードバンク岩手はこちら

善意の気持ちをつなぐ

阿部知幸さん(以下敬称略)「一つはSOSの入り口になることです。困っているけどどこに相談すればいいかわからない、という人がポストを見て支援を知ってもらうきっかけになる。最寄りの支援機関についても記載しているので、「この食品はどうやったらもらえるの?」と支援を受けるための連絡ができます。
 もう一つは“善意の受け皿”になること。例えば、「何かしたい」と思っても一般的なボランティアは時間や体力、時には資格が必要な場合もあり、すぐに行動するには意外とハードルが高いんですね。でも自分のお小遣いで買った食べ物をフードポストに入れることはすぐに始められる。「誰かのために何かやりたい」という善意をつなぐ場所にもなっています。困っている人だけを支援するのではなく、何かやりたいという人の気持ちを受け取ってつなぐ。その役割が『フードバンク岩手』なんです。」

▲フードポスト

※  フードポストは、岩手圏内のショッピングモールなどに設置されている。​寄付された食材を集める役割に加えて、困りごとを抱えながらも相談先を知らない人々のSOSの入り口にもなる。

▲活動の様子

▲フードポストに寄付された食品たち

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フードバンクは“目的”ではなく、“手段”のひとつ

フードバンク岩手では、学校の夏休み、冬休みなど長期休暇の前には提供する食品が不足することがあり“フードドライブキャンペーン”と銘打って食品の提供を呼び掛けています。「学校の給食が頼り」という家庭もあり、給食がない長期休みの間、食事に困らないように支援するためです。

その一方で、給食さえも頼りにできないという現実もあります。

▲ (c)UFO RF /a.collectionRF /amanaimages

阿部「盛岡には給食がなくお弁当持参という学校があります。ある学校から連絡をいただいたケースでは、いつもお弁当をさっさと食べて校庭へ行ってしまう生徒がいて、あまりにも食べるのが早いので、担任の先生がのぞいてみると毎日持ってきていたお弁当箱は空だった、という事もありました」

困っていると言い出せないケースもあれば、どうすれば支援が受けられるのかわからないというケースもあります。また「生活に困っている家庭が対象です」と表立って伝えることで、受け取る側を傷つけたり困らせてしまう事もあります。

阿部「支援機関の方が家庭を訪れる時に「フードバンク岩手という、おせっかいなNPOから届けてくれって頼まれて」と言って、家庭の様子をうかがう口実にしてもらってもいいんです。そうやって、なるべく支援機関とのつながりを早期に作れるようにしています。いざとなれば、いろんな支援があるんだ、と知っておくだけでも心の持ち様は全然違ったものになるので」

家庭との接点をなるべく増やすことは、相手を傷つけることなく信頼関係を築くために。なるべく早い段階で支援機関に繋がるようにすることは、困り切ってしまう前に手を差し伸べられるように。

阿部さんは「フードバンクを運営することが目的ではなくて、これは貧困をなくすための手段」と言います。

コロナ禍になってからの変化としては、SOSの要請件数も前年比2.5倍に。加えて1件当たりの支援量も増えているそう。

「支援件数を見てみると2020年4月~8月末は435世帯。2021年4月~8月末は781世帯でした。支援量も2週間分の支援で目処がたっていたところが、1か月分になるなど、増えています。コロナ禍になって非正規雇用の方は、解雇はされていないけど勤務時間が減ってしまったという方が増えています。こういう問題は“失業率が下がっていないから大丈夫”という考えでは解決できない、数値で見えてこない部分です。」

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命に直結しなくても、心の支えになる支援

以前に、EARTBANK GALLERYの活動の中で、撮影で用意したパンプスを提供させてもらったことがありました。

阿部「ご提供いただいた靴はとある家庭の方に届けました。例えば、授業参観などにお母さんがきれいな靴を履いてきてくれたら、子どもも嬉しいと思うんです。お母さんにとっても「こんな靴もらったよ」と家庭での楽しい会話になったりします。こういう支援は数値には表れないけど、確実に良い方につながります。
親御さんが心配事を多く抱えていつも気持ちがソワソワしている状況より、「あなたは心配しなくてもいいよ」と子どもに言ってあげられる方が、その子の10年後、20年後は違ってくる。バタフライ効果という言葉がありますが、命に直結しなくても価値のある支援があります」

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目指すのは“想い”が循環するシステム

今後のビジョンについて阿部さんにお聞きするとこんな答えが返ってきました。

阿部「目指しているのは『フードバンク岩手』が必要とされない世界です。我々がなくなっても大丈夫な世界を作りたい。そのためには、世の中の1割の人が「フードバンクに寄付したことがある」経験を持つことです。フードバンクだけじゃなくてもいいと思います。困っている人がいて、そのために自分の持っているものを差し出す。1割の人がそういった経験をすれば、後は加速度的にみんなが貧困について考える世界になるでしょう。今はその1割の人を作り出しているところです」

阿部さんのお話を伺っていると、支援とは「助ける人、助けられる人」という単純な二極の構図ではないことに気づかされます。理想は誰かが誰かを思いやる、善意の気持ちがぐるぐると循環するような世界。それは問題にたいして広く全体を見渡している阿部さんならではの構想です。

自分が持っている食材をフードポストに届けること。
空いている時間で箱詰め作業を手伝うこと。

インターネットを通じて支援する方法もあります。

今すぐに自分でできることがとても小さいものであっても、その行動はやがて大きな意味を持ち始めます。その先には阿部さんが思い描く、フードバンクが必要ない世界がひろがっているかも知れません。

▲世帯人数や年齢などを考えて各家庭に箱詰めされた食材。

「ボランティアで高校生もたくさん手伝ってくれています。そのご家庭に何が必要か、どんなものが喜ばれるか、一生懸命考えながら取り組んでくれます。箱詰めもとても上手です。」

▲フードバンク岩手 事務局長 阿部 知幸さんと、スタッフのみなさん。

All photographs are the copyright of individual photographers/ amana& EARTHBANKGALLERY   ©︎ 2021 amana inc.